ヘリコプターの展示室

ヘリコプターといえば1つ以上の回転翼により揚力と推進力を得る航空機とされ、通常はプロペラエンジン部の角度を変更できるチルトローター機やエンジンがマウントされた翼の角度を可変するチルトウイング機等のVTOL機はこの範疇には含まれません。

空中停止(ホバリング)や前後進、今では宙返りまで空を自由に飛び回れる点に加え、比較的大きな輸送量をも持たせうる利点の反面、やはり固定翼航空機に比べてその速度性能や航続距離の点での見劣りは否めません。

特に速度性能の低さは戦場における地対空ミサイルの恰好の餌食となり、ベトナム戦争、湾岸・イラク戦争でも犠牲が目立ちました。

逆にこの速度性能の低さと低空での機動性が買われて対戦車ヘリという新たなジャンルも築かれていますがやはりその飛行性能を生かした近距離輸送や救難を任務とする機体が主流です。

ここではヘリコプターだけでなく一部垂直離着陸機(コンバチプレーン等)をキットで紹介していきます。


輸送ヘリ

 

Piasecki YH-16A 

1/96 Scale   Revell

最初はタンデムローター型大型軍用輸送ヘリの試作機Piasecki (パイアセッキ)YH-16Aを。

YH-16は米国陸軍用にパイアセッキ社が開発した当時世界最大のタンデム双発ヘリコプターであり、1953年に初飛行しましたが結局試作のみで終わってしまいました。

双発ローター式の場合には各回転翼を互いに逆回転で回すことで機体への回転トルクを打ち消すことが出来るため、構造上長いテールブームとトルク打ち消し用のテールローターがいらない点がメリットです。

パイロット等3名の乗員を含む45名の人員輸送が可能な本機は試験運用中に2号機が後方ロータの不調から墜落。開発がキャンセルされてしまいました。

 

 

Bristol Belvedere Type192

1/72 Scale    AIRFIX

Bristol社Belvedere192型(ベルベデール・タイプ192)は英国大型民間輸送機として計画されたものの開発はキャンセル。

その後英国空軍(RSF)に開発は引き継がれて1958年に初飛行します。その3年後に正式兵員輸送機としてRAFに採用され活躍しました。

キットはその最終派生型です。

乗員3名と兵員30名の輸送が可能でした。

 

 

Kaman  H-43B Huskie

1/32 Scale  TESTER

双発ローター機の中でも特異なサイドバイサイドの交差式シンクロローター機構を得意としたKaman社の H-43B Huskie:カマン・ハスキーです。

このヘリは2つのローター回転面が互いに交差する様に設置されていながら個々の回転翼が互いに接触しない様な角度位置で同期逆回転する機構になっています。

キットのB型は発動機を初期のレシプロエンジンからターボシャフトエンジンに変更した後期タイプで、これにより推力のパワーアップとともにエンジンが占めていた機体後部スペースをキャビンとして利用可能となり、救難装備等が充実しました。

この機体は救難用(特に火災時等の)に設計された機体と言ってもよいもので胴体後部にはガラス張りの救難活動用ベイハッチがあり、機体後部から伸びた2本のテールブームとそれをつなぐ水平尾翼のような横ブーム(フラップのように作動機構を持っていました)で囲まれたエリアを使って地上での救難者の搬送活動をスムーズに行えました。

またこの機体も左右のローターを逆回転させて横方向トルクを打ち消していますが、機体には後部に長く伸びたジェット排気ノズルが設けられており、これを下面に吹き出して機体姿勢の安定と共に救難活動へのエンジン排気の影響を最小限にするように設計されています。特異な形態の双発機ですがこのようにミッションへの適合性が考え抜かれた機体として永らく活躍しました。

Testor社から再販された1/32スケールのキットですが初版時はモーターライズドキットでこの双発ローターの同期回転がうまく再現されていた名作キットでした。

またHarkからは1/48スケールも発売されていました。

 

 

BOEING VERTOL CH-D

1/72 Scale      FUJIMI

日本でもなじみが深い大型タンデム双発機ボーイング・バートルCH-47チヌークとは兄弟分の間柄のこの機体。

その生い立ちは少し複雑で先にお披露目した世界初のタンデム双発大型輸送ヘリYH-16Aを試作したパイアセッキ社を前身とするバートル社が試作したモデル107(V-107)まで遡ることができます。このモデル107を米陸軍がYHC-1Aとして試験運用したもののパワー不足から本機採用を断念。新たに全面改設計したものがCH-47チヌークでした。
一方でバートルは陸軍に採用されなかったモデル107のエンジンのみを高出力型に換装したモデル107-ⅡをCH-47よりも一年早く進空させ、海兵隊に採用されました。これがキットのCH-46 Sea-Night:シーナイトです。
日本でもこのタイプが川崎重工業でライセンス生産されKV-107として官民、自衛隊にて広く採用されています。
キットはフジミの1/72スケール、NAVY(米海兵隊)仕様のCH-47D(通称は歌でも有名なホテルカルフォルニア:箱絵の機体底部のハッチ部にマーキング絵が描かれているのがわかるでしょうか?)

 

 

SIKORSKY CH 54

SKY CRANE

1/100 Scale         TAMIYA

シコルスキーの大型クレーンヘリCH-54 Sky Crane(Tarhe)スカイクレーン(タルヘ)。
このヘリは純垂直上昇ペイロードとし10tの性能を有する大型機で、高度9000mまでの世界最速の上昇率記録を保持し続けています。
箱絵の専用コンテナをつり下げて救急・人員輸送に従事したり戦場にて墜落機体の回収に大活躍しました。
キットは古いタミヤの1/100スケールです。

その他に古くはAURORAの1/72やRevellからもリリースされていた記憶があります。

 

 

SIKORSKY RH-53D

Sea Stallion

1/72 Scale         FUJIMI

同じくシコルスキーのCH-53:Sea Stallion:シ-スタリオンシリーズ。
西側最大のヘリコプタ-として永く君臨していますが残念ながら世界最大の積載量記録を保有しているのは旧ソビエトのミルMi-12です(純垂直上昇モードで31tのペイロード、また滑空上昇では40tを持ち上げています)。

ただこの大きさで宙返り飛行を難なくこなすのですから凄いヘリです。

海兵隊強襲用大型輸送ヘリとして運用されてきたD型までのスタリオンは現在同社のチルトロ-タ-垂直離着陸機V-22オスプレイにリプレ-スされてきました。
現在はパワ-プラントを3発に増発したス-パ-スタリオン/シ-ドラゴンが主流になっています。
キットはオークションで見つけた古いフジミの1/72スケ-ル 海軍型のRH-53D型。このCH-53シリーズのキットは現在非常に入手が難しいキットになってしまいました。

 

 


戦闘攻撃ヘリコプター

米ソ間の冷戦が消えた現在、軍用ヘリコプタ-の一分野として今だに確固たる地位を維持している攻撃ヘリ(対戦車ヘリコプタ-)。

日本でも90機近く導入されたBellのAH-1ヒュ-イコブラや自衛隊の次期主力攻撃ヘリに決まりながら国内ライセンス生産機の価格高騰に加えて米国本国の生産ラインのシャットダウンにより部品調達さえ閉ざされてしまい、13機という少数のみで調達断念に至った最新鋭のマクドネルダグラス(現ボ-イング)AH-64(D)アパッチロングボウが有名でしょう。

世界の攻撃ヘリの幾つかをキットでご紹介します。

 

 

BELL AH-1W Super COBRA

1/72 Scale            TAMIYA

まずは小型ながらその攻撃力と機動性でベトナム戦争からその存在意義を世に知らしめた世界初の攻撃ヘリ、ベルのコブラシリ-ズ。

1966年に量産型1Gが陸軍に納入されてから現在に至っても改良型の機体がいまだ現役である攻撃ヘリです。

スリムな機体でデザイン的にもお気に入りの攻撃ヘリですが、中でも海兵隊仕様のバブルキャノピ-仕様のシーコブラがいいと思うのですが。

陸軍や自衛隊で採用されている耐弾性を高めた平面グラスキャノピ-タイプの1S型はちと無骨でこのクラスの機体には少し似合わないような気も。

 

キットはタミヤのAH-1W ス-パ-コブラ(1/72スケ-ル)。

陸軍で活躍したAH-1Gヒュ-イコブラを海兵隊向けに双発化した第2世代機です。

 

 

Lockheed AH-56 Cheyenne

1/72 Scale         AURORA

初代AH-1コブラと米国の主力攻撃ヘリの座を争い、一時期はその座を射止めた高性能攻撃ヘリ Lockheed AH-56 Cheyenne:シャイアンです。

細長い胴体に固定翼、後部にはプッシャー式の推進プロペラを有する高速機であったシャイアンは当時として画期的なスーパー攻撃ヘリでした。

しかしながら開発費の野放図な高騰から採用中止の憂き目にあい、結局AH-1が主力攻撃ヘリとして返り咲き、数々の改良バージョンが造られてきました。

最近Anigrand Craftworksよりこのシャイアンの1/72レジンキットのリリースが予告されたのでその出来が楽しみですが。

キットは古いAURORAのものです。

 

キット内容

パーツのディテール

 

 


HUGE AH-64A APACHE

1/72 Scale    Hasegawa

次いで現在西側最強の攻撃ヘリと謳われるAH-64 Apache:アパッチです。

1976年12月ベルのYAH-63Aとの競作審査で正式採用を勝ち取った機体です。

最強といわれ実戦投入された湾岸戦争やアフガニスタン紛争ではその非弱性も露呈してしまい、被害がことのほか多かったのも事実でした。

その教訓から米軍は最新鋭のロングボウ火器管制レーダーシステムをローターマスト上に搭載し、空対地のみならず空対空における索敵、攻撃能力を飛躍的に向上させたAH-64Dの配備を進めてきました(しかしながらやはり先のイラン戦争でも何機かがスティンガー携帯型空対地ミサイルの標的となっています)。

キットは古いハセガワの1/72スケールのAH-64Aアパッチです。

 

 

KAMOV   KA-52 ALLIGATOR

1/72 Scale     TAMIYA

1997年初飛行したロシアの攻撃ヘリ、カモフKa-52 アリゲーター。

先代のKa-50ブラックシャーク/ホーカム(下記写真)は52と同様にカモフの得意とする同軸二重反転ローターを採用し、高機動性とともに高度なアビオニクスと火器管制システムを搭載し、それまでソ連攻撃ヘリの主流であった乗員2名搭乗形式からパイロット一名のみで航法、索敵、攻撃のすべてがこなせる様に高度な自動化がなされていました。万一その乗員が負傷し、操縦士を失った場合でも機体のダメージが少なければ搭載オートパイロットシステムによって完全自動で基地まで帰還することが出来たとされています。

この様な高度な自動化システムを目玉にカモフ社は国内外への積極的なセールスを計りましたが結局各国軍部に対し一名乗員システムへの根強い不安を払拭できずに売り込みは失敗に。

この教訓からカモフはサイドバイサイドの複座2名乗員方式とした機体を再設計し、各制御システムをさらに洗練したものに換装したものがKa-52です。

特にその夜間攻撃能力や兵装の多様性は直系のKa-50やその夜間攻撃型のKa50sh譲りの世界一級の性能でした。

現在昨年2015年に初飛行した最新鋭K型が試験中です。

 

KA-50 HOKAM

 

 

こちらがカモフKa-50。

ご覧の通り珍しい単座攻撃ヘリでした。Ka-52同様に機体右側面に装備された30mm機関砲がいかにも狩人らしい攻撃ヘリです。


EUROCOPTER TIGRE      

1/72 Scale     TAMIYA

フランスとドイツの共同開発、ユーロコプターが製造を担当している欧州現用戦闘ヘリ「ティーガ」。

1991年に初飛行しています。

当時イタリアはトルコとの間で同規模の戦闘ヘリ「マングスタ」を開発中でしたのでこのティーガの開発・運用には参画していません。

輸出版は「タイガー」と呼称を改め、スペインとオーストラリアが運用中です。

写真の如くタンデム復座のコクピットですが従来機種とは異なり、パイロットが前席、射撃手が後席に割り当てられています。

 

 

 

RAH-66 COMANCHE 

1/72 Scale       TAMIYA

 ステルスヘリの先駆けとして米国のボーイングとシコルスキーが共同開発したRAH-66「コマンチ」。

試作機が2機製作され初飛行は1996年でした。隠密行動性に優れた性能からその将来は約束されていたかに見えましたがその後の実用化に手間取り、また当時最前線で運用される偵察・索敵・攻撃ケースにおいて有人ヘリに対しての優位性からその存在価値が急速に高まっていたUAV(無人偵察・攻撃機)のさらなる高性能化の機運に押され、このコマンチ計画は2004年に中止されてしまいます。