飛行艇と水上機のキット展示室

 

この展示室では民間・軍用の別なく水上を滑走路として離発着する航空機のキットをご紹介していきます。

 

ジブリの世界でもご紹介していますが「紅の豚」では舞台がアドリア海ということもあり登場する飛行メカはほとんどが飛行艇や水上飛行機でした。

両者は水上機として同一ジャンルに分類されますが一般的には飛行艇は機体そのものが直接水面に接する船体の役割をするものを指し、水上飛行機(フロ-ト機)は陸上滑走路に離着陸する航空機の脚の代わりにフロ-トを取り付け、水面に離着水できるようにしたものを指します。

まあ機体とフロ-トが一体になったGRUMMAN J2F5 Duck:グラマン・ダックや機体下部を引き込み式フロ-トとして出し入れする機体も試作考案された位なのでまあその分類にも曖昧なところもありますが..........。

日本はこの飛行艇、フロ-ト機ともに優秀な機体を数多く世に送り出してきたことは皆さんもご承知の事と思います。まあ国土が全て海で囲まれた島国ですから。

自身の好みから所蔵するキットは飛行艇ばかりなのは御容赦のほどを。

当時、飛行艇が発達する原動力のひとつが外洋客船の利用客(要するに金持ちの人々)に対して豪華さはそのままにより早い旅を提供するという手段にぴったりだったことが挙げられます。

当時は大洋を無寄航で横断できるような航続距離の長い旅客機は存在せず、また各地に空港設備が整備されていたわけではなかったので疲れたら休みましょ的にいつでも広大な海に着水でき、また給油や貨客の乗降に既存の港を利用できる大型の飛行艇の需要が結構あったわけです。

しかしながら豪華客船による大洋横断定期航路線の没落よりも前、航続距離の長い大型レシプロ旅客機の登場や空港施設の整備によって空の旅が一般化してくるとまずこの飛行艇による優雅な旅に終止符が打たれてしまいました。

 

 


DORNIER DO-X Flying Boat

1/144 Scale  OTAKI

OTAKIの1/144スケ-ルビックプレ-ンシリ-ズのひとつ、ドルニエDO-X巨人飛行艇のキットです。このシリーズは

LOCKHEED C5A Galaxy:ギャラクシ-やBOEING Super Guppy:スーパ-グッピ-大型輸送機、後述のLOCKHEED H-4 Hercules:ハーキュレス飛行艇という異色の大型機ばかりをピックアップしたシリ-ズでした。

飛行艇といえばその独特なフォルムから有名なDORNIER:ドルニエが開発した12発の大型飛行艇Do-Xでしょう。

三層構造の機体で最上階が操縦室、二階部分に客席とともにラウンジやバー、寝室や厨房といった豪華設備を配した(下層は荷物室と燃料タンク)野心作でしたが同時に駄作機でもありました。

プッシュプル方式の双発エンジンを収納した6基のナセルを高翼上面にずらっと並べた12発のパワープラントは、案の定後方エンジンの冷却不足による慢性的な出力不足を呈し、加えて前述の豪華装備による重量超過にごらんの通りの流体力学をお構いなしの驚くべき厚翼から本機の航続距離は実用に程遠いものでした。

試作3機はデモ飛行と称して世界各地を訪問したものの遂に実用機としての日の目は見ませんでした。

ただ駄作機であってもこの機体が当時の人々に与えたインパクトは超一級だったことでしょう。

今回おまけにDo-Xの特徴を良く掴んでいるデル・プラドの1/200スケ-ルメタルモデルも載せました。

 



BOEING 314

1/144 Scale       Airfix

実用機に目を向けますとまず米国のSIKORSKY:シコルスキーM40/42に始まり、MARTIN:マーチンM-130、BOEING:ボーイング314といった大型飛行艇が挙げられます。

当時の米国ナショナルフラッグキャリア-のPAN AM:パンナムがそれぞれの機体を南米航路(M40/42)、太平洋航路(M-130)、遅れて大西洋航路(B-314)に投入して好評を博し、飛行艇は黄金時代を迎えます。

M-130とB-314はともにキット化されており写真のキットはAirfixからリリ-スされた1/144スケ-ルのB-314 DIXIE CLIPPER:デキシークリッパー号。

ただしデカールは英国BOAC仕様も選択できるようになっています。

一方、3機製造されたM-130は映画にもなったCHAINA CLIPPER:チャイナ・クリッパー号が特に有名です。

M-130の方は古いキットですがStrombeckerからPAN AM仕様で1/144スケールが出ていました。

 

 


HUGHES  H-4  HERCULES  TWA ver.

1/144Scale      MINICRAFT

デカプリオが主演した映画「アビエーター」の主人公:稀代の大金持ちで数々の奇行で名をはせた航空界の奇才Howard Robert Hughes, Jr.:ハワード・ヒューズが米国政府と取り交わした戦時大型輸送機製造契約による資金援助下で何とかでっち上げた(失礼)全木製の超大型飛行艇です。

レオナルド・ディカプリオ主演のアビエイターでも当時国外ルートを独占していたPAN・AMと激しくやり合った時期、この初飛行のエピソードが描かれていました。

確かにあの総二階建てのエアバスのA380にほぼ匹敵する大きさで全木製(戦時下ゆえに統制物質である金属は使わない超大型機を作れという契約でしたから)という本機が曲がりなりにも宙に浮かび上がったことは(飛行高度20~25m、1600mという飛行距離からすれば舞い上がったとは決して言えないのですが)驚異的です。

先ほどでっち上げたと言いましたがこの機体を20m空に浮かせるだけでも、木材の複合パネル製法から機体に張巡らされた全ての動翼の油圧パワーアシストシステムと時代を先んじた革新技術を開発・搭載したエポックメーキングの機体であったことは事実です。

嘘か誠かハワードの経営する航空会社TWA:トランスワールドエアーラインではこのスプルーグースを旅客飛行艇として運用することを想定していたというのがキット写真。

このキットは有名なオオタキのビックプレーンシリーズのものではなくパーツ割りからしてGマーク製キットの再販と思うのですが、箱絵に描かれた旅客機の顔でもある客室窓やラウンジとおぼしき大型の側面窓はすべてデカール処理です。

シュリンクパックなのでパーツ内容を詳細に確認出来ない状況だったのですが旧Gマ-クのキットにこのオリジナルデカ-ルとモダンな新箱絵であの値段?なめるな~と言いたくなるキットではありますがまあそこはこんな機体、めったにリリースされないから良しとしましょう。

 

最後は飛行艇ではないのですが同一の名前HERACLES=HERCULESの英国の大型複葉旅客機ヘラクレスのキット(1/144スケール Airfix)を単なる語呂合わせでご紹介しておきましょう。

ハンドレページが英国インペリアル航空向けに開発した大型旅客機でH.P.-42/45が機体型番です。8機製造された機体にはインペリアル航空就航時に愛称がつけられこのG-AAXC(性能改善型45型の一番機)にはヘラクレスの名称がつけられました。箱絵では機体にコールサインG-AAXCが印刷されていますから間違いではありません。でも知らない人が見たらこの機種の名称がヘラクレスだって思っちゃいますよね。型式も42でなくて42W/45なのに。

 




 SHORT SUNDERLANDⅢ

1/72 Scale         Airfix

米国クリッパーシリーズに対抗すべく英国ではインペリアル航空向けにSHORT S23 Empire:ショ-トエンパイア-飛行艇を就航させます。写真はその発展型である軍用仕様のSHORT (S-25)SunderlandⅢ:ショ-ト・サンダ-ランドⅢです。

頑丈で使い勝手が良い機体と重宝がられた本機は敵国ドイツのUボートキラーとして多大な戦果を挙げました。機銃や爆弾は搭載していても機体側面の窓の列をみれば民間飛行艇の面影がありますね。

この爆撃機、飛行艇ですから簡単に機体下部に爆弾倉を設けるわけには行きません。翼下にもパイロンがないでしょ。さてどこから爆弾が出てくるのか?

この機では機体両側面の主翼直下のハッチから爆弾を吊下げたレール式ラックがせり出して爆弾を眼下のU-ボートに投下するんです。

この機構がキットに再現されており、キットの機体パーツ主翼取り付け下部にハッチが開けられているのが確認できると思います。

話は変りますが英国の大型飛行艇といえばSAUNDERS ROE Princes: サンダ-ス・ロ-(サロ-と読むと通っぽく聞こえます)プリンセスを忘れる訳にはいきません。

英国最後の10発大型飛行艇のプリンセスは主翼のエンジンナセルはプッシュ式で六基なのですが、機体中央から左右2つずつ(2~5番ナセル)は双子エンジンを搭載していたので左一番と右6番のシングルエンジンを足して10発になるのでした(エンジンは左から一番、2番と数えます)。

実用レベルに達してはいたと言われていますが搭載エンジンの不調と世に出た時期が遅すぎました。時はすでにインタ-コンチネンタル(大陸間横断)航空機時代へと歩を進め、飛行艇による空の旅は終焉を迎えていました。

この遅れてきた王女は試作機で終わってしまいましたが一時期この機体を使って原子力パワープラントの搭載試験が計画された事もあります。

キットは昔バキュ-ムで出ていましたが7万円もする英国巨人旅客機ブラバゾンのキットが売れる時代ですからね、インジェクションキットで出しても売れると思うんですが(その時はどうか内部再現してね)。

 

 


Berijew Be-6 

1/72Scale     Master Model

旧ソ連の飛行艇をご紹介。ソ連の飛行艇といえばベリエフ(ベリーエフとも)航空設計局が有名です。

旧ソビエト連邦は広大な国土と点在する大小の湖という地形故に昔から飛行艇の開発には熱心でした。

最近では先のマーチンPM-6(後ほどご紹介)の様なジェット飛行艇を幾つも開発している世界有数の飛行艇メーカーでもあります。

中でも記憶に残るのが写真のベリエフBe-6 多用途飛行艇。

ガルウイングに大出力のエンジン2基をマウントし、5000kmもの航続距離を誇っていました。キットは軍用仕様ですが民間機としても多数使われていました。

キットの写真を見ていただくと成型色は当初は白だったと思われるパーツがバラバラに黄変を示しています。こんな状態のキットは初めて観ました。飾り台と機体右パーツは真っ白で、その反対の機体半分は少し黄変、翼や細々としたパーツは黄色。

二色成形って分けでも無いでしょうし、たぶん生産ロット毎で使用プラ素材が同じではなく、後で成形品パーツをごちゃ混ぜでパックしているのかも。

ちと信じがたいキットです。

 

 


川西航空97式大型飛行艇

1/72 Scale   Hasegawa

日本においても海外の大型飛行艇による民間航空サービスに刺激され、川西航空機が開発した国産初の大型飛行艇97式を民間機に転用して南洋航路に投入しました。

大日本航空が横浜を起点に愛称を付けた18機の機体を運用し、当時トップクラスの性能に加えて室内設備や運航サ-ビスを誇ったといわれています。

残念ながらキットはその民間型ではなく原型の軍用97式大艇 1/72スケ-ルキット(ハセガワ)です。

 

 

川西航空97式大型飛行艇 23型

1/144 Scale         MONO CHROME

こちらはモノクロームの1/144スケールのキットで最終量産型の23型をモデル化しています。

民間型として南西諸島航路、国際線定期サービスに投入されたのはこの量産型でした。

残念ながらこちらも軍用型です。

 

 


二式大艇 H8K2 EMILY 

1/72Scale             Hasagawa

97式飛行艇に続き川西は船の科学館に保存展示されている日本製飛行艇の名機、二式大艇を世に送り出しました。この二式大艇は残念ながら戦時中の機体ですので輸送機として改造計画はあったものの民間機としての活躍の場はありませんでした。

キットはハセガワからリリースされた1/72スケールのキットです。

H8K2 EMILYは当時の連合国での当機の呼称で、最新の三菱火星エンジン、高強度軽量ジュラルミンや波消し装置等の新機軸採用とともに十分な銃火器を搭載した高速飛行艇として連合国も一目置く機体でした。

この二式大艇で培われたこれら飛行艇のノウハウは戦後に新明和工業と改名した同社が作り上げた高性能大型対潜哨戒飛行艇PS-1とその派生型救難飛行艇US-1として結実したのでした(なんちゃって)。

現在はUS-1A(US-1改)を経て最新のUS-2がテイクオフ。

 

 

二式大艇 12型 

1/144 Scale                   LS

LSの1/144スケールのキットです。

11型が正式採用された初号型で、この12型とは量産型のH8K2を指します。

すでに倒産・消失(1992年)してしまったLSですが直前には1/144スケールの完成度の高い現有ジェット戦闘機シリーズ(後日ご紹介)やエアーガンで名をはせたメ-カ-でした。

このキットも出来の良さには定評がありました。

 

 

SHINMEIWA PS-1   

1/72 Scale              HASAGAWA

 九七式大艇や二式大艇で培われた川西航空機製造の飛行艇造りのノウハウは戦後に新明和工業と改名した同社により世界最高性能の大型対潜哨戒飛行艇PS-1とその派生型である救難飛行艇US-1として結実しました。

とはいうもののPS-1は当初は色々と問題も多かった機体で新明和の技術陣の不断の努力の末に世界最高レベルの飛行艇との評価を得るに至った機体でした。その機体をベースに造られたこともありUS-1は最初から世界一の救難飛行艇として高い評価が与えられ永らく活躍しています。

現在では救難US-1A(US-1改)を経て最新型の救難輸送艇US-2がテイクオフしています。

一方PS-1は対潜能力に優れるロッキードのP3Cオライオン対潜哨機にその座を譲り早々と退役していきました。

写真はハセガワの古いPS-1の大型キットです。同社はその後、US-1Aのキットも出していました。

 

 

PS-1 1/248 Scale        Sunny

これも古いキットです。

サニーのビックプレーンシリーズの一つでした。

XB-70やB-1の金型はアカデミー等に移り何度か再販されていますがこのキットは金型がどうなったのかも不明です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Martin P6M Sea Master

1/87 Scale              Revell

ジェット飛行艇「Martin P6M(-2) Sea Master:シーマスター」。
飛行艇もジェット化してやろうと海軍が飛行艇の老舗マーチン社に開発を命じたターボジェット4発の超音速大型ジェット飛行艇です。
1955年に初飛行し、改修を重ねてそれなりに完成度の高い実用機として仕上がった本機は採用寸前まで行きましたが、やはり運用面の難しさと大型空母とその空母上で運用が可能となったジェット戦闘機によってその必要性が低下、あえなく消えていった機体です。
箱絵は紺と銀のツートンカラーに見えますがこれはピトー管の長い試作型の塗装。その後の改良型2の実機では船底が白、上部は少し濃いめのマリーンブルーと結構綺麗な機体塗色で試験運用が続けられました。

キットはRevellの古いキットで改修前の初期タイプでブラジルレベルからの再販ものです。これすらももう十数年前のもので今では手に入らないでしょう。
最近のキットとして改修前後のP6M-1/2コンバーティブルキットがAnigrand Craftworksから1/72スケールレジンキットで出ており、こちらは注文可能です。

パーツ一式




Martin P6M Sea Master 

1/72 Scale           MACH 2

2009年6月頃にリリースが伝えられたP-6M2シーマスター(SEA MASTER)水上ジェット爆撃機のキットです。

1/72スケールだけあってデカイ。

初回生産分はあっという間に売り切れたそうで今回は第2次生産品です。

この大きさで低圧インジェクションのキットですが逆にパーツに欠損や気泡等はほとんどありません。

そういえばVickers Variantも目立った欠陥がありませんでした。大きいキットではそれなりに圧力を高くしてるのか、使用素材が良くなっているのか?

このキットの売りはなんと言っても機体の陸上引き上げ用のガントリーでしょう。パーツ数が多く出来もなかなか良さそうですが、何せ組み立て説明図がスケッチ?と言わんばかりのラフなもので見るとクラッと目眩がするほど。

事前に図から十分パーツ構成を読み解かないといけませんね。このガントリ-を使って海に出入りする実機映像がYouTubeにも登録されています。

このスケールではAnigrandからもレジンキットながら同スケールで同価格帯のもの手に入ることは前にも書きました(メーカーに直接注文した場合)。

どちらを選ぶか難しい選択ではありますが、Anigrandの方が初期のXP6M-1とその改良型のP6M2のエンジンナセルの微妙な違いを別パーツ化しており、どちらか選択できるメリットがあります。

一方のこのMACHはP6M-2と名売っているのでその中でさらにエンジン吸入口の整流板のみ前期/後期の選択式となっています(このような過渡期的なバリエーションがあったのかは定かではないのですが)。そしてこのガントリーが何よりも貴重な点でしょう。

 

飛行艇自体が数カ国でしか運用されない今日この頃。ジェット飛行艇はこのP6M以降なりを潜めていましたがロシアのベリエフが実用化にこぎ着けているようです。

 

 


CONVAIR R3Y-2 TRADEWIND

1/164 Scale        Revell

米国海軍が大型長距離輸送飛行艇としてコンベアー社に開発を命じ、「貿易風」と名付けられた飛行提P3Yのキットです。

1950年4月、初飛行に成功したXP5Y-1と名付けられた試作機は2機造られ、試験飛行を続けていましたが1機が事故でうしなわれたものの海軍はR3Y-1として5機の製造をきめます。この2機種はほぼ同様なバナナボート型の船体にやや後方に配置されたコクピット、新型層流翼に4発のアリソンT40型ターボプロップを搭載して4基の二重反転プロペラを装備していました。

このアリソンT40エンジンは試作機の展示コーナーでご紹介した試作垂直離着陸機コンベアーXPY-1ポゴにも搭載され、開発時期も同じころとあってこのポゴとトレードウインドの2つの機が戦場における戦術を大きく変えるといったコピーの宣伝用想像図が造られ公表されていた位です。

ただR3Y-1はカーゴベイドアが船体側舷に設けられており、あまり運用性が高いものではありませんでした。

その後続いて6機製造された今回のキットR3Y-2はコクピットを機首前方に寄せ、その直前にC5-Aギャラクシーの様な跳ね上げ式のカーゴドアを設け、強襲艇同様に海岸に乗り上げるように接岸して直接機種から積み荷や車両を載せ降ろしできるように改良されました。ただ実際は波の荒い時には接岸した船体から接地させたボーディングデッキを安定化するのに相当の困難が伴ったとされています。

確かに広告のように当時の戦術輸送を一変させる機体ではありましたが、搭載したアリソンT40の技術的な問題等も最後まで尾を引き、量産は断念され結局短い期間の運用で全機引退しています。

キットは古いレベルの1/164スケールのキットでブラジルレベルでの再販品だったと思います。

2013年には機体デザインが異なるR3Y-1型が1/72スケールでAモデルからリリースされています。

 

 


CONVAIR XF2Y-1  Sea Dart

1/48 Scale      StromBecker

さてマーチンP6-Mシ―マスターに続き今日は何でもジェット化してやろうと意気込んだもののジェットエンジンそのものがまだまだ発展途上の技術であったことと軍の用兵思想の変化により消えていった水上機の二つ目を取り上げましょう。

試作機/Xプレーンコーナーで取り上げようか迷いましたが水上ジェット戦闘機という強烈な主張がありますのでここで取り上げることに。
1940年代後期から開発が始まり1953年4月に初飛行した水上ジェット迎撃・戦闘機「CONVAIR XF2-Y1Sea Dart:シーダート」です。
US Air Force(当時は陸軍航空隊)のジェット戦闘機がやっと軌道に乗り始めその速度性能に注目したUS NAVYが海軍運用機もジェット化できないかと考えたものの、当時の海軍運用空母にはカタパルトもない、あっても小型の貧弱なものだった時代ではプロペラ機の様には離発着もままならず、それなら広い海を滑走路にすればいいと海軍は考えて.......。

人間が水上スキーでうまく海を滑走できるのだから従来の水上機のフロートの変わりにスキーを履かせ(このスキーをハイドロスキーと呼びます)、海水を極力吸い込まないように背中にジェット吸気口と二基のエンジンを載せてそのジェット推進によって海上に浮かんだ静止状態から加速浮上、そして離水と一連の発進スキームにて空に舞い上がって敵を迎撃、艦隊護衛をさせようという計画でした。
このあたりの感覚はボーイングの高速水中翼船ジェットフォイルに乗った経験のある方なら容易に想像できるでしょう、まさにあれです。
しかし、当時のエンジン出力の貧弱さとともに人間の水上スキーを真似た二本のハイドロスキーでは水上抵抗が予想外に大きく、機体は浮上するものの一向に離水速度が得られずにただ海上を疾走するだけ(全く飛ばなかったわけではないようで)。特に海上の天候と波高には大きく影響を受け、安定して発進できないのは致命的でした。
いろいろな形状のハイドロスキーを試作しては履かせ実験を繰り返した結果、断面がV字の一枚板スキーでこの難問を乗り切ったののですが結局所定の速度のマッハ1.5は出ずじまい。
そうこうしている内に大型の空母ユナイテッドステーツ(後のフォレスタル級)の建造計画や蒸気カタパルトの実用化が進み、無理をして海から発進する必要もなくなり1956年に計画はキャンセルされてしまったというわけです。

キットオリジナルはあの幻のストロンベッカーもの。米国のとある古い貸倉庫から出てきた金型群の中にあった本キットの金型を買い取り(アメリカの賃貸契約の切れた負債物件貸倉庫ってお宝発掘団の格好のターゲットなんですよね)限定再販されたことが古い模型雑誌に書かれてました。キットは全世界1000キットの限定生産の再販もので再販会社はRare-Plane Detective。

スケールは1/60の半端キットですがシリアルNo.736/1000の限定生産証明がついています。
ハイドロスキーは当初の2本スキータイプ。オリジナルが古いキットだから.....

デカールも黄色の縞模様が各翼やエンジン吸気口に派手に描かれた(マークセッターは必須!)機体が再現できます。

 

シリアル入りの組立説明書

 

 


Sea Dart 

1/72 Scale  MACH2

こちらは少し前にマッハ2からリリースされたシーダート。

残念ながらこれも2本ハイドロスキーバージョンです。

確かに海上を疾走している時の見栄えはこちらの方がいいといえば.........。

V型断面の一本スキーバージョンはAnigrandのレジンキットで選択できたと記憶しています。

 

 

 

 

 

 

 

 


UF-2 ALBATROSS

1/72Scale  Hasegawa/Monogram

これは飛行艇として有名なGRUMMAN UF-2 ALBATROSS:グラマン・アルバトロス救難飛行艇。

キットは海上自衛隊が米軍から供与されて運用していた「かりがね」。

ハセガワ・MONOGRAMの1/72スケールキットでした。

MONOGRAM時代から機体とともに話題になったゴムボートに乗った遭難者のおまけもそのまま入っています。

この使い易かったARBATROSS(1機だけ供与されたUF-1型)を模範に新明和工業がこの機体を改造した試作機UF-XSを作ってPS-1/US-1の開発に生かしたことは有名な話ですね。