9号館 C:歴史的記念物展示館3
思い出のMIDI楽器
SHARP MZ-2500のサウンドクリエイターで電子楽器に興味を持ち、次のマイブームになったのがMIDI規格と電子楽器でした。
PCのディスプレイ内で楽曲編集(音源編集・採譜・エフェクト・再生)の全てができる様な時代はもう少し先.........
専用シーケンサーによるキーイン打ち込みがやっと出来るようになった時代でした。しかし面倒くさい事が大嫌いな自身は昔習ってたピアノを武器に無謀にもすべて鍵盤打ち込みにて楽曲コピーにいそしむ毎日でした。
そして入り浸るエリアも秋葉原から新御茶ノ水界隈までになっていきました。
Roland D-20
最初に購入したMIDI楽器がこのオールインワンタイプのローランド D-20でした。
音源部はLA音源によるプリセット128種(A/Bバンク切り替え)、リズム63種に加えて64種のプログラマブルの音色が編集記憶可能。
パフォーマンスモードに加えてシーケンサーによるマルチティンバーモードが搭載。
そのシーケンサーはリズム1トラックにパート8トラックの計9トラックでデータは搭載された2DDフロッピーにレコード/ローディング可能といったコストパフォーマンスが結構高かったキーボード付きシンセサイザーでした。
お店で当時重厚なプリセット音で絶大な人気を誇っていたコルグのM1とどちらを買うかで悩みんだ末にお得感だけでRoland派に........
でも使いやすかったシンセでした。
今日久しぶりに電源を入れて見ましたがまだLCDにはバッテリー低下の警告「Check Internal Battery」はでません。最初の5~6年目位で一度交換した記憶もあるのですが本来ならばもうプログラム情報とかとっくにすっ飛んでいるかと思いきや........
まだ大丈夫?
音源とエフェクター
D-20はコストパフォーマンスの高いマルチティンバーキーボードでしたが使いこなしていくと同時発音数16音とはいえ同時16音譜/音色発生というわけではないのが肝。1音色が4音源の組み合わせで合成/構成された音色ですと1音符で4音源消費してしまうのです。
これでは厚みのある和音等を使うと音抜けや消音といった同時発音数の能力不足が露呈し始めます。
そうすると次にそろえたくなるのが外部音源。半年に一度のなけなしのボーナスをつぎ込んで少しづつ追加購入していく数年でした。
まずD-20の音源部のみを1UラックタイプとしたD-110を追加。
そのころには自然な音色を得意とするサンプリング音源のPCM音源が流行りだして同メーカーのU-110を追加(最下段)しました。
同じ会社の音源ばかりだといけないかな?とYAMAHAのAWM2音源搭載のTG55に手を出す始末。
ある程度音源が増えてくるとMIDIパッチャー(音源の組み合わせ設定を瞬時に切り替えたり、マスターキーボードからの信号をミックス/分配する装置)も必要になります。D-110とU-110に挟まれたA-880がこれです。
仕上げにはエフェクター。
各種の再生シーンのシミュレーション効果、パンニングやローターリースピーカー効果とかディレイといった当時ポップミュージックで多用されたエフェクトがプリセット内蔵されている人気機種、AlesisのQuadraVerbを導入。
実はボコーダーも欲しかったのですが(YMOのテクノポリス等で使われていた声の合成エフェクターです)これは適当なものが見つからず断念。
デジタル楽器の全盛時代になるとMIDI関連音楽雑誌には「やっぱりアナログ音源!」といった趣旨の記事が目につき始めました。
当時ですらアナログ音源は高価なビンテージ品ばかり。
またアナログ信号をデジタルのMIDIネットワークに組み込むこと自体がそう簡単ではなく、そんなときに新宿山野楽器の中古コーナーでOberhaimのMatrix6Rを見つけ、これまた手頃な価格とオ-バ-ハイムというブランド名だけで.........。
この音源、純粋のアナログシンセサイザーではありません。
Digital Controlled Oscillatorによってアナログ波形をデジタル処理してMIDIコントロール(自分でも何言ってるんだか......)も可能とした使いやすさとお手頃価格といった半アナログ音源でした。
しかし初心者には音源のパラメータエディットが煩雑で結局プリセットをセレクトして使うのがやっと(メモリー機能がありますので外部供給デ-タのインストールが可能)でした。
マスターキーボード
KURZWEIL MIDIBOARD Ver3.0
音源が増えてくると直接MIDIコマンドでリアルタイムにシステム内の機器をコントロールできないかという欲求が出てきます。
実際録音したMIDIデ-タを使ってシーケンサーが全システムをコントロール出来るのですから演奏中のキーボードからも出来ないかと。
まさにそれを可能とするのがMIDIマスターキーボードでした。
このKURZWEILのMIDIBOARDはYMOの坂本龍一さんやキース・エマーソンといった有名どころの愛用キーボード(と雑誌に書かれていた記憶が........)として人気がありました。
木製の88フル鍵盤で総重量36kgもあるこのMIDIBOADはリアルピアノタッチとMIDIコントロールに特化したキーボードで音源は搭載されていません。
木製キーのアクションはハンマー機構ではないものの実際のキータッチは標準設定でヤマハ系ピアノのタッチをちょい重くしたまさにピアノそのもの。このタッチすらも左側のスライダーで如何様にも(ちょっと大げさかな)変えられます。
これにPCMピアノ音源を繋げればまさにピアノになりました。
このあとからもっと軽量でよりリアルなピアノ音源が搭載された電子ピアノが一般向けに沢山出てきました。
今もたま~に叩きますがご覧の通り、すでにトップは物置状態(困ったものだ)。
Roland MC-500 MkⅡ
当時トップクラスの高性能(スコア―入力&編集とシーケンサー機能)を誇り、MIDI Micro Composerの名器とされた機種です。
下位機には200が設定されていました(使いこなせないくせに見え張って買うから)。
作成したスコア―を3.5インチFDDに保存したり、システムプロフラムのアップデーターもこのFDDで供給されました。
基本的にこのマシンのキーだけの打ち込みで作曲やその編集及びMIDI機器のシーケンシャルコントロールが可能。ただし情報は左上の小さな液晶画面での確認です。バックライト式なのでデータの視認性は問題ありませんでした。
真ん中のジョグダイヤルは編集中パートの早送りや巻き戻し、入力数値の上下等に活躍したダイヤルです。
デザイン的にはちょっと大型の事務用電卓のようでしょ?楔形の本体に機能別に配列されたキーとその押し具合が絶妙でした。
とにかく長時間の打ち込み作業を少しでも楽させてあげましょうといった心遣いが感じられるマシンでした。
マスターキーボードに繋げて楽譜の入力を目指しましたが結局使いこなせないままその後も同社のD-20本体シーケンサーを使い続ける始末.........
その後マックで動く”Steinberg社の Virtual Studio Technology:VSTが発売され、コンピューターミュージックも格段に身近になりました。
PCのキーボードと大型CRT画面上でスコア―編集できる時代を味わってしまうとこのようなプロ仕様機は現場に持ち込めるモバイル性(専用のキャリアーケースもありました)のみがメリット。
それさえも少し経てばノートPCの性能も上がってきて..........
今でも動きますよ。
富田 勲さん追悼企画
日本のシンセサイザー奏者の草分けだった富田勲氏が5月5日に永眠されました。
当時ホルストのご遺族を説得して発売されたTOMITA「The PLANETS」。
シンセサイザーという楽器に大きな興味をもつ始まりでした。
そして続くYMOの「TECHNOPOLIS」で脳天に一撃を食らい、この9号館で展示中のシンセサイザーにのめり込んだ時代が始まります。
The TOMITA PLANETS RVC
「そうだ、当時LP買ったんだ」とふと思い出して古いレコードの保管場所にありました。
当時一、二回再生してあとはカセットに落とし、デッキで聞いていましたのでほとんど当時のままでした。
とは言えとうの昔に当時流行ったオーディオコンポシステム(シャープの「オプトニカ」でした)は残っているのはFMチューナー位。
残念ながら今となってはレコードを聞ける状況ではありません。
このレコードは作曲者のホルストの遺言で一切のフルオーケストラスコア以外での商業改変演奏が禁じられていたとのことで世に出るまで多くの苦労があったのは有名な話です。
レコードの解説シートには富田さんの名で製作過程や苦労話とともに演奏に使った機器のリストが記載されています。
シンセサイザーはMOOGとLOLANDの音源が主体だったようですが導入・終演のオルゴールやカー無線での交信音等、シンセサイザー以外の実音源も使っている事も明かされています。
本来はCD-4(懐かしい!)の4chステレオ再生がベストとされていながら一般に普及していた2chのアナログステレオで再生するために今で言えばサラウンドの走りのような疑似音源録音処理をしてあるのでコンポの2台のスピーカーと聞き手が正三角形か二等辺三角形の配置で聞くと最大の音響の広がりを体験できるとのアドバイスが書かれています。
自身を一時期ながら(笑)シンセサイザーという新しい楽器の魅力に引き込んでくれたレコード。
富田勲さんのご冥福をお祈りします。