はじめに
キット紹介・製作記事第三弾としてチャールトン・ヘストン主演のSF映画「PLANET of the APES(邦題:猿の惑星)」に登場する宇宙船イカルスの製作過程を綴っていきます。
このキットはFantastic Plastic Modelsからリリースされたイカルス宇宙船1/72スケールのレジンキットです。
宇宙船イカルスのキットは当館ギャラリーの6号館2A展示室にMonster in Motion、Wilco!にCrows nestのキットも公開していますのでどうぞそちらもご参照ください。
映画ではこの宇宙船イカルスは準光速飛行が可能な宇宙船で、探査ミッション完了後に相対性理論に基づけば約700年後の地球へと帰路についていました。
しかし到着した惑星において帰還先を見失なったイカルスのオートパイロットは混乱して湖に緊急着水、結局水没してしまいます。
この着水部を含めたイカルス宇宙船の全体像については映画公開直後からこの映画のファンや研究家らによって色々論議がなされてきました。
科学的見地から着水した部分は前部コクピット部(緊急脱出カプセルか帰還部カプセル)であるという説も多く、本来の宇宙船イカルスの姿は如何に?と何人ものアーティストが自身のアイデアやコンセプト画を発表しています。
このキットはMr.Jan Rukrによるフルシップコンセプト画をもとにしたものでちょっとステルス機のHopeless Diamond(風洞実験のみ)を彷彿させる菱形のデザインです。
彼のHPにはこのフルシップのまま惑星(地球)に近づきながらもシステムトラブルが発生、湖へ不時着水するまでの推定経過も掲載されています。
今回のキットは簡単ながらもコクピット内部が再現されていますので内部のライティングとともにランディングギアを組み込んで地上駐機中のイカルスを再現してみようと思います。
Step.1 前準備
1)部品チェックとパーツの洗浄処理
キットは写真の如くレジンキャスト製の2枚の本体上下パーツにロケットノズル群やコクピット内のインテリア、クリアプラのウインドーパーツから構成されておりパーツ数は多くありません。
デカールはJBOT製。
レジンの主要パーツにはバリや気泡はほとんど見当たらず、素材もサクサクした切削・穴あけ等加工がし易い樹脂です。
またまた釈迦に説法ですがレジンキット組立の定番作業であるパーツ表面に残っている離型剤除去のため、キャスト製パーツをまず中性洗剤を加えたぬるま湯につけ表面を軽く擦るように洗ってから乾かします。この表面洗浄が不十分ですと塗装時にハジキ等のムラが出ますので十分に行ってください。
またポリ袋のシール開封前のボディー下部後縁に小さな欠けがありました。袋の中に欠片は入っていませんでしたので製造、パッケージング過程での不具合でしょう。
まあレジンキットには少なからず成型不良が不可避ですのでここは文句を言わず修正しました(笑)。
このような薄い部分の欠損部は同じ様な形に切り出したプラ板をあてがい、瞬間接着剤を含浸させて接着後に精密ヤスリで成型すると簡単に修復できます。
船体後部エッジの欠け
補修を完了
Step.2 船体外部の追加加工処理
1)前脚、主脚取付用船体加工
オリジナルキットでは着陸脚の格納場所はデカールで表現します。
ただしデカールの貼付位置が前述のHPに掲載されているイラストとは少しずれている様に見えます(特に前脚位置)。
主脚は本来もっと後ろなのですが機体の構造や全体のバランスを考えてこんな位置に。少し開口部が小さかったかな?
写真のテープは罫書き用のラインガイドテープです。
こんな感じで穴を開けました。
エッジ部はヤスリ掛けをしてからガイドテープを外しました。
2)エンジンノズル部の電飾発光(予定)用の穴開け
取り敢えず船体後部のエンジンノズル類の取り付け穴は開口(3mmドリル)しておきます。
3)船体仮組調整
船体は上部パーツの内側に下部パーツをはめ込む形なので上下の合わせ目は上手く隠せますが下部パーツの形状が微妙に異なり上手くハマりません。
今回のキットでは
①下部全長が1mm程長い、
②微妙に厚みが不均一な部分がある
等若干摺り合わせが必要でした。
4)主脚、前脚格納庫の設置
今回既存の手持ちキットやジャンクパーツで着陸脚を再現する事に決めたために脚格納庫及び格納庫ドアも必要になり、これは古いハセガワの1/72スケール RA-5C Vigilanteのキットから調達しました。
主脚庫はビジランテの左右の機体パーツからアートナイフにノコギリ刃を付けて切り出した物です。
5)格納庫開口部の再修正
コンセプト画では主脚部はもう少し縦長の開口形状です。
ビジランテから調達したパーツ形状もあって今回オリジナル形状にしてみました。
カバードアも本来は船体スライド式という設定なのかもしれませんがここはスペースシャトル等でも実績のあった通常開閉式としました。
主脚格納庫ドアは湾曲部を切除してそのまま格納庫内部の隔壁に利用しました。
Step.3 船体塗装
1)船体マスキング
船体メイン色は白としか記載されていません。
艶消しにするか艶ありにするか悩みましたがこの程度の大きさの機体なら艶あり白で行くことに。
塗装する前にコクピット前面とエンジンノズル部(オリーブドラブ)をマスキングしておきます。
エンジン廻りはライトグレーとの指示ですのでここも全面的にマスキングしました。
2)船体塗装①
船体はMr. Whiteサーフェーサー1000を吹いたの後にグロスホワイトを吹きました。
乾燥後にマスキングテープを剥がした処です。
3)船体の塗装②
今度はマスキングした船体未塗装部分の塗装作業です。
船首コクピット前部と後部上部エンジン部はオリーブドラブ、後縁の左右3つずつのスリットはメタルブラックか艶消しブラックで。
後部下部のメインエンジン部はライトグレーで塗装します。
機種のレドーム部はゴールドですがこれは後で処理します。
Step.4 コクピット内部の加工と塗装
1)コクピット部の塗装①
コクピットコントロールパネル部も上手くハマりませんので寸法やエッジの摺り合わせ研磨をして仮止めしてから内部をタンで塗装します。
将棋の駒形状のコクピット内部形状をくりぬいたコピー用紙をマスキングシートとして載せて塗装完了後に外しました。
後で操縦席の追加やパネル類のデカール処理をします。
2)コクピット内の塗装②
床はミディアムグレー、船首に続く脱出ハッチはレッドに。
今回コールドスリープ装置は電動ルーターで人型の窪みと引き出しハンドル部を彫り込み少し色味を濃くしました。
実際は装置パッド部は黒です。
コールドスリープ装置は二段ベッドのように4つあるのですが今回下部だけで(うーん......)
4)コクピットパネルのデカール処理
こんな感じで.....。
あとはマイク状の突起物も付けますか?
3)チェアーの塗装
全体をフラットブラックで塗装後、両サイドのアームチェアー下部の金属部と背面のパイプ露出部の表現をアルミシルバーで。
取説にはアームレストもシルバーと記載されていますが映画では黒です。
第一回の製作レポートはここまでということで。
さて第二回。
製作を続けましょう。今回で勢いで一気に完成までをご報告。
コクピット部完成
スリープ装置の塗り直し、コクピットに左右マイクを取付て脱出部隔壁には蛇足ながらエンジンノズルも。
オリジナルセットのではこのノズル間に設けられたハッチから浸水が起こり、水没した事になってますね。
Step.5 ライティング
1)天井部
映画のセットではコクピット上部の内壁にはスポンジ状のこぶが並んだ緩衝エクステリアが張り巡らされていました。
今回は少しパターンは異なるのですがハウスモデル用塩ビ製パターンシートを貼り付けてみました。
4箇所のHIBERNATION Lightsはデカールでも準備されているのですがここでは改造パーツで対応しています。
コクピット内のライティングはWarm WhiteのテープLED(1ユニット)を採用しました。
2)主エンジンのライティング
主エンジンのノズル取り付け部には3㎜の穴が十分に開けられるのでまずドリルでパイピングします。
塗装後本体に装着固定後に3㎜径の砲弾型LEDを差し込み発光源としました。
ノズル根元の開口
LEDのセット方法
配線状況
3)サブエンジン
レジン製のオリジナルエンジンパイプのパーツは質感がイマイチなので同径のアルミパイプを切り自作しました。
取り合えず室内光源(漏れ)で発光させることはできそうです。
Step.6 船外加工
降着装置と電源
降着装置はロックウェルB-1のジャンクパーツを流用しています。
コンセプト原画ではメインギアはTu-144のプロトタイプのような6輪ボギーにスキッド装備なのですがこの辺はあくまで想像の世界です。XB-70なんかの主脚もいいかもしれません。
ただスケールは本体の1/72に合わせるよりも1/144位の一回り小さい物にした方が船体が大きく見えていいかもしれませんね。
ここは皆さんの自由な発想で。
右主脚が少し傾いでしまってますね。
9Vバッテリーは内臓を諦め写真の様な燃料給油パイプを模した金属フレキパイプの中に配線を通して外部にバッテリーとスイッチを逃がしました。
Step.7 デカール処理と最終仕上げ
滑走路はTOMITECの航空装備品5 駐機場ベース(4枚セット)を使用。
JBOTのデカールは非常に透明度が高く、また薄いので余白はほとんど目立ちません。今回のデカールはJBOTにしては珍しく若干のかすれや印刷抜け等があります。
キット入手時にデカールが間に合わないので後で別送するとの連絡があったことを思い出しそんな事情もあったのでしょう。
アートナイフで切り出した各部デカールは数秒間水に漬けてすぐに引き上げ、モデル上でスライドさせて指示位置に載せます。間違っても幾つも水に浸さないよう。数秒以上つけておくと台紙からデカールが浮き出し、大変な事になりますので要注意です。
デカール部が薄いのでセット後にシワや気泡抜きには綿棒等を使い丁寧に広げていきましょう。
特に両翼端のエアーブレーキを表現するデカールと黄色の円形マークは要注意です(自分が危うく失敗しそうになったもので.......)。
まあこんなところでどうでしょうか?